あんた、似てるね

黄昏症候群、37巻 深夜の双星


ダイジェストに紹介します。


東京、西新宿六丁目に位置する
お食事処「犬屋」
いやね、
始める時に看板を書いたら、
本名の大屋の字に筆がすべって
「犬」となったんだ。
左の背中に般若の紋身を抱えちゃ
いるが、ヤクザじゃ無い。
ため込んだ家賃を催促する電話に
応対しているときに都合がいい、
客が来たとプツリと切って・・・


時々やって来る還暦前あたりの女。
注文の酒の一合と出した鉢には
山口県で採れた海草カジメに
モロヘイヤを合わせた、
一寸ヌルヌルして苦味な一品。
続いて、春の香りを感じるぜと
「こごみ」の、お浸し。


あんた、深夜食堂のマスター
みたいだね
」と女。
「そうかい、よく知らないけれど」
他に客が居ない深夜の時間に二人


「あんた、深夜な時間に時々来る
けど、何して食ってるんだ?」
当ててごらんよ、
「年齢は50代後半、独りモンだな」
それは当り、なにしてるかは
一発で当たれば百万あげる

男は家賃が払えると色めき立つ。


その代わり、外れたらアタシの
部屋に来てアタシを抱くってどう?


男の推測は近い線を示したが残念
だけど外れた、
男を住まいに誘い二人は久しぶりの
快楽に溺れる。
背中の般若が女を狂わせ、
関りが続く或る日、
ニュースが女は作家で著作が受賞を
告げていて素性を知ることになる。


そうした中、家賃を払うのも大変な
様子ならアタシの別荘の管理と料理
の面倒を見てくれないかの話となり
店の暖簾を下ろして身を転じる。
週末には多くの来訪者で賑やかだが
平日は穏やかに日が暮れる。


しかし、
そんな毎日も永遠には続かない。
女が来なくなる。
そうした中、弁護士から電話が入り
彼女の死亡を知らされ、
遺言には別荘の権利を譲るとある。


加えて遺書には、
余命宣告を受け残された時間をどう
過ごすかを考え、何度か訪れて好き
だった犬屋の店で、タイプだった
マスターと他愛もない話をしながら
一日が暮れればいいと考えました、
それが、まさかの男女の仲にまで
なるとは夢のようでした。
とある。


男は別荘を売却し、女が居心地が
良かったと感じた西新宿の店を買
い取り、コの字型の店内に一席を
予約席として亡くなった美砂子用
の空席を設けて誰にも座らせずに
人生を再び始めることにした。


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